少量なら飲んでもOK?適正な飲酒量が「ゼロ」である根拠について解説します

【少量なら飲んでもOK?】適正な飲酒量は「ゼロ」である根拠について解説します禁酒断酒

『全く飲まないよりも、ほどほどに飲む方が健康に良いんでしょ?』

こう思っている人は意外と多いのではないでしょうか。

今回は、こういった論調に一石を投じる内容となっております。

昨年に遡りますが、次のツイートをしました。

科学の世界は日進月歩。

昨日の常識が今日の非常識になり得る世界です。

少し前までは、「適量の飲酒は健康に良い」と言われていました。

いわゆる「Jカーブ」といわれるものです。

ところが2018年、ある論文が発表されます。

そこには『適正な飲酒量はゼロ』と結論づけられていたことから、世界中に衝撃が走りました。

そこで今回の記事では、この論文について解説していこうと思います。

私は現在、ヘルスケア関連企業に15年以上勤務しており、2019年10月12日から現在進行形で完全断酒を続けています。

Twitterも毎日投稿していますのでご興味あればリンクボタンからよろしくどうぞ(^^)

この件に限らず、常に情報をアップデートし続けていくことはとても大事ですね。

『変わらないものなんてこの世にない』ということが唯一「変わらないこと」だから。

この記事を最後まで読むと、断酒を続けていく理由がまた1つ増えると思います。

それでは早速いってみましょう!

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まず結論から

まず結論から

By evaluating all associated relative risks for alcohol use, we found that consuming zero standard drinks daily minimises the overall risk to health.

Lancet 2018; 392: 1015–35

まずは結論ですが、上記の引用箇所を一言でまとめると「飲酒量ゼロが全ての健康リスクを最小化させる」です。

もちろん、先ほど触れた"「Jカーブ」も踏まえた上で"の結論です。

ちなみにJカーブとは、下図のようにアルコール消費量がゼロよりも少し多い方がむしろリスクが小さくなるというもので、そのグラフの形から「Jカーブ」と呼ばれています。

J-カーブ
厚生労働省 e-ヘルスネット「飲酒とJカーブ」より引用
※2022年12月にe-ヘルスネットから削除されました

実は、アルコール摂取におけるJカーブがみられているのは「総死亡数」「虚血性心疾患」「脳梗塞」「2型糖尿病」など限られた項目、限られた年齢層であり、他の疾患や若年者には当てはまらないことに注意が必要です。

論文の概要

論文の概要

それでは、この研究の概要についてご紹介していきます。

英語の論文なので日本語翻訳した後に噛み砕き、できる限りシンプルにまとめました。

研究するに至った背景

そもそもアルコール摂取は、死亡や身体障害に対する主なリスク因子であることが明らかになっています。

その一方で、少量のお酒は身体に良いとされているところがあり、これは未解決のままとなっています。

なので実際のところはどうなのか調べてみました。

研究方法

Global Health Data Exchange (GHDx)とPubmedという膨大なデータベースを使って文献を検索しました。

195の国と地域にわたり、アルコール消費量に関する694個のデータと、アルコール使用のリスクに関する592個の臨床研究からデータを抽出し、分析しました。

さらに、システマティックレビューからメタ解析をおこないました。

研究結果

研究結果

毎日の飲酒量をゼロにすると、すべての健康損失のリスクが最小限に抑えられることが分かりました(Figure 5)。

逆に毎日の飲酒量が増えるに従ってリスクは上昇しました。

このリスク曲線は、女性の虚血性心疾患と糖尿病に関連するアルコール使用のプラスの効果(Jカーブ)を含んでいます。

しかしこれらのプラスの効果(Jカーブ)は、アルコール摂取にともなって増加する癌関連のリスクによって相殺されました

研究結果から分かったこと

毎日のアルコール摂取量をゼロにすることで、健康への全体的なリスクが最小限に抑えられることが分かりました。

特に癌のリスクはアルコール摂取量の増加とともに上昇し、健康損失を最小にする摂取量はゼロであることが分かりました。

世界的にアルコール摂取は病気の主なリスク因子であり、15~49歳の死亡原因のほぼ10%を占めています。

このまま政策措置がなければ、将来の健康に対して悲惨な結果をもたらすことになります。

本研究では、飲酒の最も安全なレベルはないことを示しました。

アルコール摂取は多くの健康喪失の原因となり、特に男性では生涯にわたり健康被害をもたらします。

論文の信頼性

論文の信頼性

さて、「アルコール摂取量はゼロがいい」といった極端な話が出てくると必ず、「そんなはずはない!なんか怪しいし信用ならない!」と言い出す人が一定数います。

なので念のために、この論文の信頼性についても触れておきます。

掲載雑誌は?

論文が掲載されたのは「The Lancet(ランセット)」という、知る人ぞ知る世界トップクラスの権威ある医学雑誌です。

ちなみに、最新の医学系雑誌のインパクトファクター※では世界第2位となっています。

No.医学雑誌・ジャーナルの名前2020年発表のIF
1New England Journal of Medicine (NEJM)74.7
2The Lancet60.4
3The Journal of the American Medical Association (JAMA)45.5
4Nature Medicine36.1
5British Medical Journal (BMJ)30.2
https://www.roncolle.com/impactfactor-ranking/より引用

(※インパクトファクター:簡単にいうと、その雑誌がどれだけ多くの論文に引用されているかを示す指標です)

医師であれば必ず知っている雑誌ですし、その権威性も世界中で認知されています。

もし仮に論文を書いて投稿したとしても、掲載されるためのハードルがかなり高く、ちょっとやそっとの論文ではまず審査を通過できません。

つまり「質」が担保されている医学雑誌なのです。

もしそれでも信用ならないと思うのであれば、あなたがよく行く病院の医師に「ランセットってご存知ですか?どんな雑誌なんですか?」と聞いてみてください。

もしも知らないと言う医師がいたら、その病院には行かない方がいいと思います。

エビデンスレベルは?

ピンとこない人もいると思いますので解説しますと、エビデンス(evidence)というのは「根拠」という意味で用いられ、「そのデータにはどれくらいの信ぴょう性があるのか?」を段階的に示したものがエビデンスレベルです。

科学の世界のお話は、怪しい噂話から科学的に裏付けされたものまで様々です。

情報を受け取る側がきちんと判断できないと、誤った情報に振り回されてしまいます。

具体的なエビデンスレベルを以下の表にまとめましたが、上にいくほどエビデンスレベルが高く、下にいくほどエビデンスレベルが低いということになります。

システマティック・レビュー/RCTのメタアナリシス
1つ以上のランダム化比較試験による
非ランダム化比較試験による
Ⅳa分析疫学的研究(コホート研究)
Ⅳb分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
記述研究(症例報告やケース・シリーズ)
患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見
https://ganjoho.jp/public/knowledge/guideline/index.htmlより引用

私は健康食品やサプリメントを販売している通販番組の内容を全く信用していませんが、それはこういう頭でものごとを見ているからです。

ちなみに今回取り上げた論文のタイトルは、『Alcohol use and burden for 195 countries and territories,1990–2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016』となっており、システマティックレビューが含まれており、エビデンスレベルが高いことが分かります。

まとめ

まとめ

英語が得意ではないので読みづらいところも多かったと思いますが、簡単に結論をまとめます。

これまでアルコール摂取の是非については、「Jカーブ」を根拠として「少量のお酒は身体に良い」とする意見が多くありました。

ところが今回の研究結果によると、アルコール摂取による癌関連リスク上昇が Jカーブを相殺して余りあることが分かりました。

つまり、『アルコール摂取はゼロがベスト』だと結論づけられたわけです。

実は、厚生労働省のサイトには次のような記載もあります。

さらに、最新の研究では、そもそも総死亡率のJカーブの存在に疑問を投げかける研究もあります。健康問題以外でも、アルコールは暴力・虐待・事故等の深刻な社会問題を引き起こします。これらの問題のリスクと飲酒量の関係もJカーブ関係を示さないことが示唆されています。
このようにJカーブは慎重に解釈する必要があり、安易に飲酒を勧めるものではありません

厚生労働省 e-ヘルスネット「飲酒とJカーブ」より引用
※2022年12月にe-ヘルスネットから削除

「ほどほどなら飲んでも問題ない」「少量のお酒は身体に良い」と思っている人は今だに多いですが、そのうち過去の話になる日が来るかもしれませんね。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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