「お酒を飲むとすぐに酔っぱらってしまう」
「飲み会は好きなんだけど途中でつぶれてしまう」
「周りはみんな飲めるのに自分だけ飲めない」
そんなあなたはひょっとすると「飲み続ければお酒に強くなる」と思っていませんか?
初めに結論からお話ししますと、
「お酒が強くなりたい!」と考えるのはとても危険なことなんです。
この記事では、「お酒に強くなりたい」と悩んでいるあなたに向けて、お酒に対する強い/弱いがどのようにして決まるのかを解説していきます。
そして、なぜ「お酒に強くなりたい」と考えるのが危険なのかということに関しても解説していきます。
私は20年くらいお酒を飲み続けてきましたが、2019年10月からお酒をやめています。
また、ヘルスケア業界で15年以上勤めており、最低限のリテラシーはあると思っています。
この記事を最後まで読み終わると、なぜお酒に強い人と弱い人がいるのか理解できるようになり、「お酒に強くなるには?」に対する答えを手にしているはずです。
お酒に強いか弱いかはどうやって決まるのか?
結論からいいますと、
❷アルコール分解によって作られる「アセトアルデヒド」を分解する能力
という2つの能力によって決まります。
いきなり難しい話だと思われたかもしれませんが、ここはとても大事な内容なのです。
それでは、お酒が身体に吸収され、分解されていく仕組みを見ていきますね。
お酒が身体に「吸収」される仕組み
まず、意外と知られていないかもしれませんが、お酒は食べ物のように消化はされません。
実は、そのまんま身体に吸収されるのです。
具体的には、『胃での吸収:小腸での吸収=2:8』といわれています。
さらに、吸収のスピードは胃より小腸の方が速いことも分かっています。
(※ お酒を空腹時に飲むと、お酒が胃から小腸にすぐ流れるので、身体に素早く吸収されてしまいます)
胃や小腸で吸収されたお酒は、『門脈(もんみゃく)』という血管から肝臓を通過します。
そして肝臓を通過するときにアルコール濃度が下げられ、そこから全身に広がっていきます。
吸収されたお酒が「分解」される仕組み
上記ではお酒が吸収される仕組みを説明しましたが、ここからはお酒が分解される仕組みに移ります。
肝臓に入ってきたお酒のほとんどは下の図のような2段階(図の青丸部分)で分解されます。
2段階というのは具体的にいいますと、次のとおりです。
アルコール
↓
アセトアルデヒド
アセトアルデヒド
↓
酢酸
(いわゆるお酢)
お酒が分解されることで生まれるアセトアルデヒドも相当な有毒物質であり、早く分解してあげなければなりません。
この第1段階と第2段階が進むスピードによってお酒に強いか弱いかが変わってくるのです。
お酒を分解するための2つの酵素
お酒は2段階で分解されるとお話ししましたが、次にアルコール分解の中心となる2つの酵素について説明していきます。
これら2つの酵素は人それぞれ生まれ持ったものであり、強いか弱いかは遺伝子レベルで既に決まっています。
つまり、お酒を飲み続ければアルコール分解酵素が増えたり酵素のパワーが増強されたりすることはありません。
生まれた時点である程度決まってしまっているのです。
第1段階:アルコール脱水素酵素
これは、略して「ADH」と呼ばれる、アルコールを分解してアセトアルデヒドを作り出す酵素です。
この酵素が弱いと、身体に吸収されたアルコールがゆっくりとしか分解されません。
逆に強いと、アルコールが速やかにアセトアルデヒドに分解されます。
第2段階:アルデヒド脱水素酵素
こちらの方は、略して「ALDH」と呼ばれる、アセトアルデヒドを分解する酵素です。
この酵素が弱いと、有毒なアセトアルデヒドがゆっくりとしか分解されません。
逆に強いと、アセトアルデヒドが速やかに酢酸に分解されます。
お酒の分解能力は肝臓の大きさにも比例する
基本的に、お酒が強いか弱いかは上で説明した2種類の酵素で決まります。
ただ、アルコール分解酵素以外にもう一つ。
アルコールを分解する能力は「肝臓」の大きさにも比例するといわれています。
仮にアルコール分解酵素のパワーが同じだとすると、体格が大きい人(肝臓が大きい人)の方がより多くのアルコールを分解できるというわけです。
お酒を飲み続ければ強くなるのか?
「強くなる」というよりも「耐性」ができる
上記でお話ししてきたように、お酒の分解能力は、2つの酵素と肝臓の大きさで決まります。
一方で、こう考える人もいるのではないでしょうか。
いやいや、その話だとお酒の強さは若いころから変わらないはずだけど、自分の場合は飲み続けてたらだんだん強くなってきたぜ?
これは、半分正解であり半分間違いです。
確かに飲み続けると強くなることはあります。
ただそれは、強くなったのではなく『耐性』ができたと考える方がむしろ自然です。
耐性とは、脳のアルコール感受性が下がり、同じ効果を得るためにアルコールの量を増やさなければならなくなることです。
つまり、『同じ量では酔わなくなる!』という状態です。
『耐性』はアルコール依存症への第一歩!
特に、「元々お酒に強くなかったけど、飲み続けていたらだんだん強くなってきたよ」という人はかなり危険です。
アルコール依存症に至るプロセスは以下のとおりです。
②耐性ができる:同じ量の飲酒では効かなくなってくる(酒に強くなってきた状態)
③精神依存:飲酒欲求、家の中を探し回る、わざわざ買いに出かける
④身体依存:お酒を飲んでいないと、不眠や手の震え等が出てくる
このように、アルコール依存症は①→②→③→④と進んでいきます。
その中で、
①習慣的な飲酒→②耐性ができる
というプロセスはアルコール依存症への第一歩であり、「お酒に強くなりたいから」という理由で飲み続けるのは正直やめた方がいいです。
これは数年単位で進むものですが、数年前と比べて度数の高いお酒を飲むようになっているという人は、お酒との向き合い方を考え直すタイミングではないでしょうか。
アルコールを分解する酵素活性が強いか弱いかは、あなたが生まれた時にすでに決まっています。
最近では、簡単な遺伝子検査をすれば分かるようになっていますので、人生の早い段階で自分の体質を知っておくことは非常に大切です。
この「GENOTYPIST」というアルコール感受性遺伝子分析キットは、日本のアルコール依存症治療の中心となっている国立病院機構 久里浜医療センターでも取り入れられているものであり信頼性は高いです。
まとめ-お酒の強い弱いを決める要素-
最後に、お酒に強いのか弱いのかを決める要素をまとめますと、以下の3点になります。
①アルコール脱水素酵素の強さ
②アルデヒド脱水素酵素の強さ
③肝臓の大きさ
もしも以前と同じ量のお酒では足りなくなったと感じ始めたのなら、お酒との付き合い方を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
飲み続けることでお酒に強くなることはあっても、それはアルコール依存症の入り口なのかもしれませんよ。
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