アルコール依存症への対処法が分かる本「おサケについてのまじめな話」の内容

アルコール依存症への対処法が分かる本「おサケについてのまじめな話」の内容書籍

「家族の中にお酒の飲み方がおかしい人がいる・・・」

「何を言ってもお酒をやめないし、もうどうすればいいのか分からない!」

こちらの書籍は、アルコール依存症本人だけでなく、家族に依存症の人がいて困っているような人にも是非読んでいただきたい一冊です。

全部で約100ページとコンパクトな本ですので、時間的/精神的に余裕がない人でも短時間で読むことができますよ。

といってもどんな内容の本なのか分からないと思いますので、内容をまとめてみました。

内容は大きく3つのパートに分かれています。

・西原理恵子さんのパート(夫が依存症)
・月乃光司さんのパート(自身が依存症)
・西原理恵子さん×月乃光司さんの対談パート

この記事では、上記3つのパートについてそれぞれご紹介していきますね。

私は現在、医療分野の民間企業に勤めており、2019年10月から断酒継続中の人間です。

この記事を読むと、「おサケについてのまじめな話」がどんな本なのかざっくり理解できます。

それでは早速いってみましょう。

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西原理恵子さんのパート(夫が依存症)

西原さんは旦那さんがアルコール依存症だったという立場の方です。

その旦那さんは42歳という若さでこの世を去られています。

このパートで私が重要だと感じたポイントは次の4点です。

①アルコール依存症患者の「家族」側の目線で書かれている
②実体験の生々しい話が赤裸々に語られている
③大事なのは「底つき」と「気づき」
④依存症患者の家族が何をするべきか明確に示してくれている

それぞれについて簡単にご紹介しますね。

①アルコール依存症患者の「家族」側の目線で書かれている

アルコール依存症は、様々なトラブルを起こし周囲の人間を巻き込んでいく病気です。

家族は、そういったトラブルに対処していくうちに疲弊しきってしまうのです。

さらには憎しみすら抱くようになっていく場合もあります。

そのような渦中にあった西原さんが「家族側」の目線で書かれているのが本パートです。

酔っぱらって暴れていたときは、「これが本性だったのか」とあさましく思ったこともありましたが、そうではなく、彼の本性はやさしさと勤勉さでした。お酒の病気のせいで、言動がゆがめられていたということを、治った彼を見て初めて理解できたのです。

「おサケについてのまじめな話」10ページ

②実体験の生々しい話が赤裸々に語られている

これは当事者にしか理解できないと思いますが、西原さんのご家庭に起こった様々なことが赤裸々に語られています。

依存症のタイプにはいろいろあるかと思いますが、この記事をご覧の「家族側」の人にとっては共通点が多くみられるのではないかと思います。

当時を思い出そうとすると、やっぱり難破船に乗っているような状況で、心身ともにへとへとでした。

「おサケについてのまじめな話」18ページ

上記の言葉からも、その壮絶さが伝わってきます。

③大事なのは「底つき」と「気づき」

私が「底つき」という言葉を知ったのはアルコール依存症の勉強を始めてからなのですが、ここでも「底つき」という単語が使われています。

専門用語では、「底つき」と「気づき」というのですが、これ以上最低最悪の自分はない、というふうに底をつき、「お酒はやめなきゃ」と本人に気づかせることが、アルコール依存症の治療の第一歩だそうです。

「おサケについてのまじめな話」22ページ

本人にいくらアルコールの害を伝えても、やめてほしいと訴えても、お願いしても、本人が「お酒をやめる」と決めない限り、決して回復に向かうことはないのです。

私の場合は、完璧な「底つき」というよりは「底つき一歩手前」、もしくは「これ以上やると底つきになる未来が見えた」という段階でお酒をやめる決意をしました。

なにか嫌な予感がしたんです。

④依存症患者の家族が何をするべきか明確に示してくれている

私は身内にアルコール依存症がいて困ったという経験はないので、この部分を読んで「ハッ」とさせられました。

本当は依存症の本人が治療機関につながることが望ましいのですが、それが難しい場合、家族だけでも専門のお医者さんに話を聞きに行くことと、家族会に行くことをお勧めします。

「おサケについてのまじめな話」26ページ

とてもカルチャーショックを受けたのですが、病院というところは「病気になった人」が行くところだと思いますよね?

ところが依存症に関しては、その本人は居なくても、家族だけでの”専門”医療機関の受診がお勧めされています。

依存症である本人は依存症だと認めない場合がほとんどですし、だからといって何もしないと家族は疲弊していき、何も改善しないどころか更に悪化して取り返しのつかないことになります。

この選択肢を知るだけでも、家族側の人は救われるのではないでしょうか。

月乃光司さんのパート(自身が依存症)

月乃さんはご本人がアルコール依存症という立場の方です。

そして現在でも断酒を継続されています。

このパートで私が重要だと感じたポイントは次の4点です。

それぞれについて簡単にご紹介しますね。

①アルコール依存症の「本人」側の目線で書かれている
②ブラックアウトはアルコール依存症の特徴のひとつ
③入院中に「死」が身近なものに
④依存症者の家族はどうするべきなのか

①アルコール依存症の「本人」側の目線で書かれている

月乃さんは19歳からお酒を飲み始め、これまで精神科への3回の入院経験があり、アルコール依存症と診断されたのは20代とのことです。

アルコール依存症になるのは中年以上というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、若い人でもなってしまう可能性は十分にあります。

月乃さんも、

「そんな病気になるわけがない」

「コミュニケーションのため酒は不可欠」

だと考えていたようです。

現在でもこのように考えている人はとても多いのではないでしょうか。

「自分だけは大丈夫」

「この病気はだらしない性格の人がなる病気」

そうではなく、誰にでもなる可能性があることを認識すべきです。

二度目の入院前、わたしの飲み方は常軌を逸していた。部屋に持ち込んだビールケースの酒をいっきに全部飲んでしまったのだ。一本飲んだら、すぐに次のビールの栓を抜いて飲む。飲んでも飲んでもとまらない。やめることができない。連続飲酒である。

「おサケについてのまじめな話」41ページ

②ブラックアウトはアルコール依存症の特徴のひとつ

あなたは、飲んで記憶をなくすという「ブラックアウト」を経験したり、ブラックアウトした人を見たことがありますか?

これは、アルコール依存症の特徴の一つだそうですし、多くのトラブルを引き起こします。

そもそも、「記憶がなくなるまで飲む=飲酒をコントロールできていない」ということなのです。

飲んで記憶がなくなってしまう人は、すぐにお酒をやめる選択をされることをお勧めします。

③入院中に「死」が身近なものに

アルコール依存症は寿命を縮めます。

月乃さんは入院中の体験談として次のように語られています。

朝六時に起きると、夕べあの人が死んだ、今朝方この人が死んだという情報が入ってくる。つい先日までふつうに会話を交わしていた人があっけなく死んでしまう。家族からも見放され、だれにも相手にされぬまま、独り病院の片隅で藻くずとなって死んでいく。順番からしたら次は自分だ。そのとき初めて、このままだとわたしもこうやって、みじめに死んでいくんだと思った。そう思ったら急に怖くなった。

「おサケについてのまじめな話」47ページ

お酒が大好きな人は、こう言います。

「酒で死ねたら本望」

でもそれは、心のどこかで

「自分はその人たちとは違う」

「自分に限っては大丈夫」

と、どこか”他人事”だと思っているからなのではないでしょうか。

④依存症者の家族はどうするべきなのか

月乃さんがアルコール依存症から回復したお話しは本書を読んでいただければと思いますが、ここでも依存症者の家族がどうすれば良いのかアドバイスが書かれています。

その中で印象的だったのが次の一文。

依存症者に対する家族の基本的なスタンスは、何もしないこと。酒を隠したり説教したりおだてたり、飲んでいれば落ち着くからといって金を渡したり、その人の尻ぬぐいといったことを一切やらない。見守ってはいても手を出さないことが、つまり、本人を「底つき」に向かわせることが、結果的に回復を早めるいちばんの方法といわれている。

「おサケについてのまじめな話」52~53ページ

その他、西原さんも同じことを書かれていますが、「専門の」医療機関を選ぶということも共通して書かれています。

逆にいうと、依存症を専門に診ていない医師にアルコール依存症の治療は無理ということです。

言い換えると、同じ医師でもその専門性によってアルコール依存症に対する認識にバラつきがあるということです。

西原理恵子さん×月の光司さんの対談パート

前半部分で、西原さんと月乃さんそれぞれの体験談が語られましたが、後半はお二人の対談の様子が書かれています。

その中でもポイントとなる項目だけ列挙しておきますね。

「知られていないことが多すぎる」

「感情のすべてが憎しみと恨みになっていくのはアルコール依存症の特徴のひとつ」

「突き放さないと、家族や周囲の人もおかしくなる」

「間違いなく死期を早める病気」

「信用の回復には時間が必要」

まとめ:アルコール依存症への対処法が分かる本「おサケについてのまじめな話」の内容

「おサケについてのまじめな話」を読むと、アルコール依存症についての知識が深まるとともに、依存症患者のいる家族が何をするべきで、何をしてはならないのかが分かります。

SOSの出し方や相談先の選び方も分かりやすく書かれていますし、巻末には「専門の」医療機関や自助グループなどの問い合わせ先も書かれています。

お酒に関する問題に直面している全ての人に是非読んでいただきたい一冊です。

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